痔の日帰り手術ブログ

2012年3月23日 金曜日

内痔核に対するALTA療法とは

痔の手術のうちで、ALTA療法という手術をご存じですか・・・いわゆる「注射だけで治す痔の手術」のことです。
痔の手術には色々な方法がありますが、痔核にメスを入れずに(切らずに)注射だけで治療することができる方法がALTA療法(通称:ジオン注射療法)です。
この「ALTA療法」の良いところは痔を切除する手術法に比べて、術後の出血や痛みが少ない点です・・・切らないわけだから当然ですよね。また、手術時間が短いことも利点の一つでしょうか・・・実際、痔を切除する手術に手慣れた当院でも手術時間としてはALTA療法のほうが短時間で終了します(約2分程度)。つまり、ALTA療法は患者さんにとって身体的にも精神的にも負担が少ない方法だと言えるでしょう。当院の痔の手術は、ALTA療法でも切除する手術(結紮切除術)でも全て日帰りで行いますが、入院して痔の手術を行う医療機関でも入院期間が短縮される(5日程度)ということで注目を集めています。

●ALTA療法の歴史

1971年に、中国の史兆岐教授らが中国にて以前より内痔核治療に用いられてきた明礬液(みょうばん液)に改良を加えて開発した「消痔霊」を開発しました。中国で30年以上の治療実績があり消痔霊の主な成分は硫酸アルミニウムカリウム(みょうばん)とタンニン酸(五倍子:ゴバイシ)です。これは中国伝統医学の「酸は収斂し、渋は個脱する」という理論に基づいたものであるとされています。「消痔霊」は1979年に中国政府の承認を受け日本にも紹介されました。ALTAは消痔霊の添加剤の一部を日本で改良したものであり、1998年より治験が開始され2005年に認可を受け販売されるようになりました。

●ALTA療法の詳細
ジオン注射によるALTA療法は脱出を伴う内痔核が適応となっており「痔を切らずに治す」という画期的な治療薬です(外痔核にはNGです!)。『ALTA』とは、『Aluminum Pstassium Sulfate Hydrate Tannic Acid』を略した名称で、主成分は硫酸アルミニウムカリウム(みょうばん)とタンニン酸という成分です。作用機序としてはALTAの主成分の硫酸アルミニウムカリウムを痔核内部に注射をして炎症反応を引き起こします。その炎症反応を修復している反応ともいうべき肉芽(増殖力の旺盛な組織が増殖し傷口を補充するもの)ができた後、線維化していきます。やがて肛門の粘膜層、粘膜下層の筋層へ癒着・固定を促し、まさに「切らずに」脱出する痔核が硬く縮んでいくので、切除する方法(結紮切除術)にかなり近い効果が得られる手術方法です。また、注射後早い段階で血流が遮断されますので、速やかに出血も止まります。ジオン注射を投与した痔核の部分が小さくなり、痔核によって引き伸ばされていた支持組織が元の位置に固定することで脱出症状がなくなるのです。ちなみに、肛門の粘膜から急激に薬物が吸収されると炎症が強くなりすぎて健康な細胞に傷をつけてしまうことがあるため、成分中の「タンニン酸」は薬物の吸収を調節する働きをしています。






●ALTA療法の実際
当院でALTA療法を行う手順を紹介します。
①まずうつ伏せの体勢になって頂きます。
②下半身から下にかかる麻酔をします(仙骨硬膜外麻酔)。
③十分に肛門周囲の筋肉を緩くなってからジオン注射を行います。
(1つの痔核に対して4ヵ所に分けて注射をしていくため、これを「4段階注射法」と呼びます。4段階注射法は高度な技術のため手技講習会などで技術の教育を受けた医師が在籍する施設にのみ使用が限定されています。)
もうこれで終了。あとは点滴をしながら休憩をしていただくのみです。患者さんにとってはカンタンで、「これなら、今まで我慢するんじゃなかった」という感想をおっしゃる方がほとんどです。

●4段階注射法の詳細(専門的;医師向けなので、患者さんとしてはskip OKですよ・・・)
1つの痔核に対して4ヵ所に分けて注射をしていく方法です。3時・7時・11時の内痔核に対してALTA療法を行う場合には、この独特の方法で投与することが義務付けられています。痔核の硬化・退縮させて治癒させるために、最も効果的で安全確実な投与方法として考案されたものです。



(4段階注射法の詳細図)

<投与手技> 
1:痔核上極部の粘膜下層への投与 
痔核上極部の上直腸動脈の拍動部(時として拍動が触れないことがある)に注射針を刺入し、粘膜下層深部に2mLを投与する。その後、針先を手元に引きながら1mLを投与する。*投与後は、粘膜表面がやや白っぽくなる。
2:痔核中央部の粘膜下層への投与 
主痔核の中央部に注射針を刺入し、粘膜下層深部に痔核体積に1mLを加えた量を標準として投与する。
3:痔核中央部の粘膜固有層への投与
上記の直後、そのまま針先を少し手元に引いて粘膜固有へ1~2mL投与する。*投与量が適当であれば粘膜の表面がやや隆起する 。
4:痔核下極部の粘膜下層への投与
痔核の下極部(歯状線の上0.1~0.2cmの部位)へ注射針を刺入し、粘膜下層深部に2~3mL投与する。その後、針先を手元に引きながら1mLを投与する。

以下は注意書き
・主痔核の体積が1cm3以下の場合、及び副痔核に投与する場合には、痔核上極部及び痔核下極部への投与は行わないこと。
・筋層内には投与しないこと。誤って筋層内に刺入した場合には、針先を一度戻し、改めて刺入してから投与すること。 
・膀胱刺激症状に十分注意し、前立腺及び腟壁には投与しないように注意すること。
・歯状線より下方への投与や、薬液が歯状線下に浸潤することにより、嵌頓痔核や肛門部疼痛があらわれるおそれがあるので注意すること。
・全ての痔核への投与を行った後、過度の炎症を予防し、効果を十分に得るため、手指で投与部位全体を十分にマッサージし、薬液を分散させること。

・・・ちょっと専門的で難しいですね。以下は一般向けに戻ります。



ALTA療法の副作用としては、頻度はそう多くありませんが血圧低下・吐き気・頭痛・食欲不振などは注射療法が終わってすぐに見られることがあります。また、数日内の症状として肛門の違和感や排便時の違和感、2週間程度内の症状としては一過性の発熱などがあります。これなら、どの副作用もさほど気にする必要もないですね。

こんなに簡単に痔核を治すことができる「ALTA療法」。痔があるかもと感じている方、お一人で悩まずに一度診察にいらしてください。

投稿者 医療法人社団LYC ららぽーと横浜クリニック | 記事URL

2012年3月14日 水曜日

『待合室の混雑状況≠実際の待ち時間』の理由とは

「病院に行ってみたら、待合室が混み合っていて座る場所も無かった」
当然待ち時間はとんでもなく長いだろうなと覚悟して待ちます。
・・・が、意外と早く診察まで終わった!という経験はありませんか?

逆に「病院に行ってみたら、待合室が割と空いている」
今日はラッキーなどと思って待ちます。
・・・が、3時間待っても診察に呼ばれない!という経験もありませんか?
実際、大学病院などでは待ち時間は3-4時間待ちは当たり前で、受診自体がほぼ一日仕事です。


病院の待ち時間は待合室からは判断出来ません。
『待合室の混雑状況≠実際の待ち時間』だからです。
なぜ見た目の混雑度との実際の待ち時間とのミスマッチが起こるのか。その理由は以下のように思います。

①患者さんごとに受診目的が異なる
ラーメン屋さんの行列はみんなラーメンを食べに来ているのでおおよそ列の長さから待ち時間が読めます。ドーナツ屋さんの行列もドーナツを買いに来ている方ばかりなので行列の長さが待ち時間と比例します。つまりラーメン屋やドーナツ屋では、お客さんが店内で要する時間がほぼ均一なので時間が読みやすいのです。
ところが、病院の場合は、待合室で受診を待っている人の目的は様々です。初診の診察を待つ人もいれば、内視鏡やCTなどの検査を受けに来た人、手術を受けに来た人、お薬だけをもらいに来た人もいます。つまり、目で見ただけでは行列全体のボリュームが判断できないのです。
例えば当院の場合であれば、内視鏡検査や手術の患者さんがいたら待ち時間は長くなります。内視鏡検査や手術は一般の診察のように早く終わりません(一人当た り20分程度です)。その合間をぬって診察をすることになるからです。そこで「今日は空いていてラッキー!と思ったのに・・・」の長い待ち時間が生じるのです。「こんなに空いているのに全然診察してもらえない。先生、どこかにお茶でもしに行っちゃったのかな・・・」なんてどうか思わないでくださいね。実は待合室の裏では一秒でも早く診察ができるように必死に内視鏡検査や手術を進めているんですよ。

②医師の人数が日によって異なる

その病院に一体何人の医師がいるのか・・・医師の人数は曜日や時間帯によって刻々と変化していきます。また、医師ごとに診療のスタイルが異なります(一人の患者さんの診療にかける時間が異なります)。
医師数が2倍であれば、単純に考えると2倍混み合っていても待ち時間は一緒です(実際には一緒どころか少なくなります)。

③待合室には診察待ちでない人もいる
当院を例にとって、待合室にいる方が待っているもの別に分類しました。
A:診察待ちの方(つまり医師への行列)
B:診察が終わって採血、内視鏡検査や手術に関する説明、血圧測定などを待っている方(つまり看護師への行列)
C:会計待ちの方(つまり会計担当する事務員への行列)
D:付添いの家族

いかがでしょうか。待合室の混雑度はA+B+C+Dを見ていることになります。
医療機関の立場から言うと、ハード(機械)とソフト(人員確保)の観点から考えてBとCは比較的容易に対処可能なもので、必要十分なモーターが用意されていますので、このB,Cカテゴリーで、とんでもなく待たされることはないでしょう。つまり、待合室に20人が待っている状況として、そのうちのAの割合が高ければ高いほど、その混雑は「重症」と言ってよいのです。



「じゃあ、どうしたら待ち時間が少なくなるの・・?」

みなさんが辿り着くのはこれですよね。当院にはちゃんと答えがあります。それは予約を取って来院することです。
病院の予約枠は先に上げた混雑の理由を考慮して「この日はこのくらいの人数であれば診察可能」と判断して枠を決めています。つまり、予約枠が少ない日=予約を取らないで来院したら待たされる日、なのです。

どうですか?少しは待ち時間について理解していただけたでしょうか。
大切なお時間を有効活用するために、みなさんも工夫してみて下さいね。

投稿者 医療法人社団LYC ららぽーと横浜クリニック | 記事URL

おしりの日帰り手術なら、ららぽーと横浜クリニックへ! TEL:045-929-5082