痔の日帰り手術ブログ

2017年5月 1日 月曜日

肛門科で最も怖い病気、壊疽性筋膜炎!

こんにちは、ららぽーと横浜クリニックです。
みなさんは「壊疽性筋膜炎(えそせいきんまくえん)」という病気をお聞きになったことはありますか?
難しい漢字が並んでいますが、まず「壊疽」とは皮膚や皮下の組織が死滅して、黒色や暗褐色に変色した状態のことを言います・・・これだけで怖くなりますよね。
今回はこの「壊疽性筋膜炎」についてご説明します。

*どんな病気?
壊疽性(えそせい)筋膜炎は、肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)や痔ろう、外傷、尿路感染がきっかけとなり、陰部や肛門周囲に急速に広範囲に炎症が進行して発症し、急激な悪化をたどる皮膚感染症です。
陰部や肛門周囲に生じた壊疽性筋膜炎は「フルニエ症候群」とも呼ばれ、半数は糖尿病の人に発症します。50~70代によく起こり、男女比は25対1と圧倒的に男性に多くみられます。
発症はまれですが肛門科領域では最も危険な病気の一つとして数えられ、死に至ることもある命にかかわる重篤な病気です。その死亡率は10%ほどです。

*どんな症状?
壊疽性筋膜炎の症状には、全身の症状の局所的な症状と2つがあります。
全身の症状
40℃以上の高熱
吐き気
関節痛
筋肉痛
全身倦怠感
とインフルエンザのような症状が出ます。非常に劇症化しやすく、進行するとショック症状、多臓器不全などを起こします。最悪の場合、敗血症を起こして亡くなってしまうこともあります。

局所的な症状
肛門や陰嚢周囲に赤く腫れた発赤
むくみから水疱
圧痛
著しい浮腫
出血による紫斑
皮膚細胞が壊死して黒くなった黒色壊死部
皮下気腫や皮下の硬結

などの皮膚症状が見られます。
重症化すると皮膚を触った時、皮下からプチプチという音(捻髪音(ねんぱつおん))が聞こえるようになります。プチプチとした感触はガスが発生しているときの特徴的な音で重症化を意味します

皮下気腫や皮下の硬結は、腹部や頸部に及ぶこともあります。
会陰部を中心とする時は外攻型、後腹膜・腹腔内に進展するものを内攻型といいます。
内攻型の場合はより悪性で、CTなどの検査を行っても確定診断することが結構難しく、致死率が高い傾向があります

一般的な筋膜炎(腰部分の皮膚によくできます)とは違って、壊疽性筋膜炎は抗生剤などの治療に反応せず急激に広がっていき、死に至りやすいのです
ほとんどが40歳代以上の男性で、多くが肛門周囲の病気をきっかけに発症する傾向にありますが、発症自体は非常にまれです。

*発症の原因は?
壊疽性筋膜炎の原因は細菌感染です。
もっとも多いのが尿路や肛門周辺からの感染です。主な原因菌はA群β溶連菌で、ほかに黄色ブドウ球菌、大腸菌などがあります。これらの細菌が、なんらかの原因によって損傷した皮膚から皮下組織に侵入し、肛門周囲、陰嚢・睾丸、会陰・大腿部の筋膜や筋肉に感染します。
細菌感染が皮下組織の筋膜まで達しますが、筋膜は全身を覆っているため、感染が全身に広がっていきます。筋膜や筋肉内で溜まった膿から腐敗ガスや毒素が発生します。
原因菌には酸素がなくとも増殖できる嫌気性菌と、酸素のあるところで増殖する好気性菌がありますが、この2つの菌が混合すると重症化します。


特に肛門周囲膿瘍が重症化すると、壊疽性筋膜炎にかかるリスクが高まります
およそ半数が肛門周囲膿瘍をきっかけに発症します。
そのほか、直腸癌の放射線治療後に発症することもあるといわれております。また、糖尿病の合併症の一つにも数えられています

*診断方法は?
壊疽性筋膜炎の診断は主に腹部単純エックス線写真、CT検査で会陰部、大腿部、鼠径部の皮下にガス像が認められたら、確定診断となります。その他、診断を補助するための皮膚の組織検査、血液検査などが行われます。
原因菌の診断方法としては、膿の培養検査を行うことで判断します。

*治療方法は?
壊疽性筋膜炎は全身に広がる感染症で、敗血症のリスクもあるので、ただちに全身症状への治療を開始する必要があります

全身療法
敗血症、細菌性ショック、高血糖に対する全身療法を行います。
糖尿病などの基礎疾患がある場合はその治療も同時に行います

外科的な治療
局所の膿汁のたまっている部位を切開し、徹底的に膿を取り除き、洗浄、消毒します。細菌感染や血流障害で壊死した組織も徹底的に除去します。
筋膜下の膿汁も排出し、筋肉を露出させ、十分に空気にさらします。
感染は全身の筋膜に沿って広がるので、この外科的治療を何度もくり返す必要があります
場合によっては、感染を食い止めるために手足の切断が必要となる場合もあります。後腹膜に進展する内攻型では開腹術も必要です。

薬を使った治療
外科的治療が終わったら、全身管理をしながら抗生剤の大量投与で強力に治療します。抗生剤も腐敗菌に有効なものを選び、注意深く全身管理を行います
特殊な治療としては、エンドトキシン吸着療法やγ(ガンマ)‐グロブリン製剤の投与、高圧酸素療法が有効な手段です。

*予防法は?
壊疽性筋膜炎への感染を予防する方法はありません。ただし、基本的な衛生習慣によって感染の可能性を軽減することはできます
身の回りの食器や調理器具などを普段から消毒し綺麗にすること、手をこまめに石けんで洗い、体も同じように清潔に保つことが有効となります。
また外傷(小さな創傷も含む)がある場合は、その都度迅速に治療し、傷口が感染するような状況を避けることも予防に繋がります。
傷がある場合に避けるべき場所として、公共の温泉やジャグジー、プールなどがあげられます。
常日頃から、肉眼では見ることのできない細菌に対する意識を徹底し、病気になるリスクを抑えていくことが壊疽性筋膜炎の予防に繋がるといえます。

*最後に
壊疽性筋膜炎の疑いがある場合には、早急に肛門科を受診し、一刻も早く治療を受ける必要があります
壊疽性筋膜炎に保存的治療の選択肢はありません。一刻も早く病態をつかみ、徹底的に早期処置・手術することが生存率を上げます。

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投稿者 医療法人社団LYC ららぽーと横浜クリニック | 記事URL

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