痔の日帰り手術ブログ

2012年1月17日 火曜日

裂肛(切れ痔)の手術;難治創

ららぽーと横浜クリニックでは、多くの裂肛(切れ痔)の手術が行われています。
(参照)ららぽーと横浜クリニック

裂肛(切れ痔)の手術では、裂肛部分(切れている部分が深くなって潰瘍になっていることが多い)と周囲の盛り上がり部分(切れ痔の周囲はイボやポリープになって盛り上がっていることが多い)を切除します。
ところが、手術法に工夫がないと、切除した傷が極端に治りにくくなることがあるのです。


手術すると、手術前にあった切れ痔部分がさらに深くへこむことになり、自然治癒(肉芽が自然に盛り上がってきます)を待つことになります。手術前よりも大きな傷になるわけですから、治らないような気がしてしまうかもしれませんが、実際は治ります。傷になってへこんだ部分に良い肉芽が増えていくかが勝負の分かれ目です。

切れ痔は主に、肛門の後ろ側(つまり背中側)にできることが多いのですが、本当に真後ろにできた手術創は治りにくくなることが多いようです。
一説には、手術法を工夫することなく手術した場合は90%近くが難治創になると言われています。
(*仮に難治創になったとしても、正しい処置を行えば完全によくなるので心配無用です。)

そこで、肛門科医の専門技術的には、手術創部の位置をうまく変更したり、創の形をうまく整えたり・・・他にも様々な(ブログでは公開できないような秘伝の?)工夫があります。

私自身の経験では、手術法に工夫した場合は難治創になる確率は10%以下です。
普通の「外科医」でなく「肛門科医」で手術を受けるメリットはこういったところにあるのでしょう。

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2012年1月17日 火曜日

痔(内痔核)の手術:PPH法とは

痔核の手術に「PPH法(Procedure for Prolapse and Hemorrhoids)」というものがあります。
ヨーロッパで開発され、日本では2000年から主に肛門専門病院で行われるようになった、自動縫合器による痔の新しい手術法のことです。以前はLongo法と呼ばれていましたが、日本ではPPH法として既に一般的になった印象です。

従来の痔の手術は、「はさみ」や「メス」を使って肛門の皮膚より肛門粘膜内へ切り込んで、発達した静脈瘤(痔のことです)を削ぎ落とす方法でしたが、
・術後の痛みがある
・消毒の手間がかかる
・完治に時間がかかる
という課題がありました。

そこでPPH法は、特殊な「専用器具」(自動吻合器)を用い、肛門管内の痛みを感じる神経のない直腸粘膜部分を環状に切除してから粘膜を吻合します。
痔核を吊り上げることになるので、手術直後には痔自体は残っていますが、肛門内に収まることになります。
そして、血流が遮断されることになるので痔核は徐々に小さくなります(約1ヶ月で縮小)。

・・・・痔を「切除する」という従来の発想から「吊り上げる」という発想転換が素晴らしいですね。


PPH法の特徴は
・痛みが少ない(最大の特徴)
・回復が早い
・日常生活の排便に支障ない
・術後がきれい(傷跡が残らない)
などがあります。「痔の手術はとても痛い」という時代は、手術法と術後管理の発達によっていまや完全に過去のものになろうとしています。

痔の手術法には、「切除」以外にも「PPH法」「ジオン注射」という方法もあります。
どの手術方法が最も適しているのかは、患者さんぼ病状で異なります。

例えば、今回のPPHについては、
・痔が肛門の全周にわたる症例では、効果的な手術になるでしょう。
・逆に、痔の肛門外への脱出が大きすぎる症例ではPPH法を行っても肛門内に痔が戻りきらないでしょう。
・肛門の一方向に偏って、痔核が偏在しているケースでもPPH法の適応にはなりにくいでしょう。


治療法の選択にはトータルバランスが重要です。
そのような意味では、最適で常識的な手術術式の決定のためには、熟練した専門医の診察を受ける必要があるということです。

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2012年1月17日 火曜日

切れ痔(裂肛)を改善させる生活習慣について

今日も切れ痔(裂肛)の患者さんを多く見かけました。切れ痔の症状のうち一番辛いのは、なんといっても排便時や排便後の痛みです。・・・そして、排便後に痛む時間が長くなってくるほど、治療には手術が必要なことが多いです。今日は「切れ痔(裂肛)」について少し真面目に?書いてみました。

・裂肛とはどんな病気? 
肛門上皮に生じた裂創で、慢性化して悪化すると「肛門潰瘍」となり、排便時には激しい疼痛と出血を伴います。
原因は、硬い糞便の排泄により肛門が過伸展され、薄くて脆い肛門上皮に断裂を生じるためです。
症状は、排泄時の肛門部痛と少量の出血が主な症状で、疼痛は灼熱感(熱く焼ける感じ)を 伴い、激痛のことが多く、掻痒感(かゆみ)や排便傷害も伴う事があります。
裂肛の治療は、十分な水分の摂取と緩下剤の服用や肛門の洗浄、軟膏の使用により、多くは保存的に(つまり手術なしで)軽快しますこれらで効果ない場合や何回も再発する時には、部分的切開術や括約筋伸展術などの手術を受ける必要があります。

*注意!! 
今日の話です・・・似たような症状だったので切れ痔だと本人が思っていたら、実は直腸の癌だった患者がいました。大腸内視鏡検査で判明しました。本人は痔だと思い込んでいたため、大腸内視鏡検査をする気にならなかったところを、なんとか説得した患者さんでした・・・まだ癌の転移はないことが不幸中の幸いでしたが、本当に命拾いでした。(こういった話は本当にいつも経験します)

・切れ痔(裂肛)を改善させる生活習慣(やっと、今日書こうとした内容にたどり着きました)
硬い糞便の排泄を繰り返しただけで手術が必要になる可能性がある厄介な病気ですので、少しでも日常生活で予防したいものです。そのために、平素から次の生活習慣を心がけましょう。

☆繊維中心の食事をする
食物繊維は、おなかの調子を整える大事な成分です。これは消化されにくく糞便の容積を増やすために大腸が刺激されて便通を促します。普段から、動物性食物を避けて植物性の食物を多く摂取しましょう。
例えば、野菜(特に、ごぼう・キャベツ・セロリ・大根・豆類・山芋等で地面に生えているもの)や海藻類が効果的です。果物(りんご・バナナ・桃・オレンジなど)も良いでしょう。逆に繊維をほとんど含まない食物(肉・ピザ・スナック菓子・インスタント食品・チーズ・アイスクリーム)は控えましょう。

☆便秘を避ける 
繊維中心の食事に加え、適度な運動をする事は健康の両輪です。運動によって、内臓やおなか(大腸)の活発化を促進することが大事です。夜、寝ているときは大腸などの消化器官も寝ていますので便意は感じません。
そこで、朝の起床時に冷水コップ一杯を飲み軽く運動する事により、体全体が活発化し便意を促進させます。
一日を通じて十分な水や飲み物(野菜や果物のジュース、スープ類)は、大便を柔らかく通りを良くする効果があります。

☆排便習慣をつける 
便意を感じたら、我慢をせずにトイレに行く習慣をつける事が大切です。子供の場合、食事時間が長いため食事中のトイレは、行かせる事にしましょう。また、毎日の食事後、便意がなくても一定時間にはトイレに行ってみる。これが大事です。できれば薬でなく自然に排便するような習慣が大事です。排便は怒責せず(力まない!)、短時間に終えましょう。

☆香辛料食品を避けコーヒーや酒・タバコを控える
刺激物である唐辛子や辛しの効いた食品を避け、コーヒー・酒・タバコも控えましょう。

☆肛門を清潔に保つ
毎日入浴(又は坐浴)して肛門を清潔にし、血行を促進させましょう。

☆規則正しい生活をする
夜更かしをやめて早寝早起き、食事やトイレを一定の時間に行う事を習慣付けして、体に覚えさせましょう。


・・・・いかがでしょうか?
切れ痔(裂肛)を改善させる生活習慣は概ね、いぼ痔の予防に近いものです。
もし生活習慣を守っても、肛門が切れてしまったら・・・是非早めに病院を受診しましょう。
病院を受診して適切な肛門部の治療を行うのはもちろん、本当に大腸癌でないかも確かめてもらうことも必要です。(「肛門から出血した」という患者さんの5%前後に大腸癌があるのですが、本人が痔の出血だと思っている場合が大半です。)

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2012年1月17日 火曜日

肛門の膿皮症は痔瘻(痔ろう)と紛らわしい!

今回は、痔瘻(あな痔)と間違われやすい「膿皮症」という病気について書きます。痔瘻も難治なことがありますが、この「膿皮症」の方がもっと厄介な病気なのです。「膿皮症」とは、肛門周囲の汗腺や皮脂腺に細菌が感染し、化膿して膿が出る病気のことです。思春期以降の男性の肛門周囲または臀部の皮下膿瘍として発生し、多発した膿のたまりが破裂して硬い化膿巣をつくります。膿の形は複雑で、時々再燃を繰り返して、徐々に臀部全体に広がっていきます。病変の皮膚は茶褐色になり、皮膚が厚くなって広がっていくのです。
(参照)膿皮症

かっては、慢性化膿性感染とも呼ばれており、本症の60%に、痔瘻が併存しています。痔瘻と間違われやすい病気ですが、抗生物質や手術など、適切な治療をうけることが大切です。
尚、まれに有棘細胞癌や扁平上皮癌を併発することがあります。治療の原則は外科的切除です。

瘻孔の開口部や硬い部分の皮膚を円形にくり抜き、皮下組織まで達します。この繰り返しをたくさん行うことで、臀筋と皮膚に囲まれた病変がひと塊で切除されます(温存された皮膚はメッシュ状に残ります)。筋膜付近の一見正常に見える部位の皮下瘻管も見逃さないように病変部を大きく切除するのが原則です。
瘻管が非常に複雑に分岐していたり臀部全体に広がっていたりする場合などは、再発率が高く非常に難治性です。皮膚欠損部が大きくなった場合には、ほとんどは自然に肉芽が上がってくるのを待ちます。
(ある程度の肉芽形成後に遊離植皮を行う方法や、完全切除後、一期的に筋皮弁を用いて再建する方法も報告されています。)

*もし痔瘻が併存していたら同時に治します。
痔瘻を合併するのかどうかは、術前に超音波検査やMRIを行えば、ある程度は把握できます。しかし、術前診断で「膿皮症」とされていたものが、手術中に「痔瘻」だと判明したり、またその逆のパターンもあったりと、完全な術前診断は不可能です。「膿皮症」も「痔瘻」も完治のためには根治手術が必要なことに変わりありません。
「最終的な診断は術中に行う」ということで全く問題はないのです。

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2012年1月17日 火曜日

痔が注射一本で治る!! 「ジオン注射」について

「痔が注射一本で治る!!」・・・本当なのか!?私は数年前に初めて「ジオン注射」のことを聞いたときには疑問に思いました。

最初に結論を書きます。
・ジオン注射は「いぼ痔」に対する注射です。
・全ての「いぼ痔」に適応になるわけではありませんので、専門家の判断が必要です。
・ほとんど痛みなく「痔が注射一本で治る!!」のですが、再発率は15-20%/年で、切除する手術と比較すると高率です。




今回は
「日本人の多くがひそかに悩む痔を根治手術なしで簡単に治せます。しかも、保険治療が可能です。」
と宣伝されている痔の注射療法、「ジオン注射」についてです。
(参照)痔核(いぼ痔)に対する注射(ALTA療法)

ALTA注射療法では、「硫酸アルミニウムカリウム」と「タンニン酸」を有効成分とする強力な硬化剤(ジオン)を痔へ直接注射することによって治療します。少し専門的になりますが、具体的な手順としては以下の通りです。

①ジオン投与前に局所麻酔もしくは仙骨硬膜外麻酔を行い、肛門周囲を緩め注射しやすくします。
②一つの痔核に対して4カ所(上極部粘膜下層、中央部粘膜下層、中央部粘膜固有層、下極部粘膜下層)に分割してジオンを局所注射します。
③しばらく点滴を行い、麻酔の影響がなくなるまで安静にします。
・・・注射すると、痔へ流れる血液の量が減り出血が止まり、痔の組織が固定化されて脱出(脱肛)も軽くなります。

これまでの臨床試験では、脱出の消失94% 排便時の出血消失94% 痔核消失58% 再発率では1年後16%という好成績です。


しかし、「ジオン注射」にはデメリットもあります。
・全ての痔に対して、ジオン注射が適しているとか治せるとかいうものではありません。
・大概の臨床試験は適応を慎重にすることによって、成績良く書かれているものですので、今回の臨床試験についても割り引いて考える必要がありそうです。
・再発率については臨床試験では「1年以内の再発が16%」であり、切除する根治手術と比較すると高率です。


・・・・つまり、今までの根治手術と比較して良い点、悪い点、適応の違いがありますので、それらを専門家が天秤にかけて治療する方針を決定するほうが良いということです。
手放しでは喜べませんが、痔の治療の有効な選択肢が増えたこと自体はうれしいことです。様々な側面を持つ「ジオン注射」ですが、「1年以内の再発が16%」という数字はある意味、立派な数字だと思います。
専門家による判断で行えるのなら、私は大いに素晴らしい治療であると思います。

投稿者 医療法人社団LYC ららぽーと横浜クリニック | 記事URL

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